俺は温かく心地良い空間に身を任せ、ぷかぷかと浮かんでいた。

 遠くの方では誰かの話す声がぼんやりと聞こえる。

 その時だった。

『これから産まれゆくその魂……其方(そなた)の力が必要となる日がくる……』

 こんなにはっきりとした声を聞いたのは初めてだった。

『我に(つか)えるのだ……』

 っていうか誰なんだ? 仕える? 意味がわからない。

 それになんで俺が姿もわからない奴に仕えないといけないんだ。

『これから先、お主が守るべき人が現れる……我に仕えると誓うのならば、其方にはそれ相応の力を授けよう……』

 その力がないと守れないのか? なんで俺なんだよ?

『必ず其方はその少女と出会うことになる……これは必然だ……だがその先で何が起こるのかは私にも予測が出来ない……だから其方の力を借りたいのだ……』

 それは俺にしか出来ないことなのか?

『そうだ……』

 じゃあ仕方ないか。あんたに仕えてやるよ。具体的なことを教えてくれよ。

『大丈夫だ……その時が来ればわかる……』

 不親切だな。まぁいっか。

 そう思った時、手の中に何か硬い物を握らされたように感じた。

『其方に力を与えた……手の中のものは、その力をコントロールするためのもの……肌身離さず持ち歩くのだ……』

 その声が止むと、再び元の音の世界に戻ったのだった。