悪女の涙は透明らしい

【千翔 side】


『自分の価値なんて把握してる』

遠くなって行く小さな背中を見つめながら、先程の彼女の言葉を思い出す。

奈緒が抱えているものがなんなのか、俺は知らない。
.......いや、正しくは知る術はある。

だけど、それは本人から聞くことであって勝手に詮索していいことじゃない。


カランッ.......

人の出入りを知らせるドアの鈴音を鳴らして、俺は【気侭】へと戻った。

「おかえり。どうだった?」

夜スタイルのカウンターのバーフロアで食器を磨いていた康兄が俺を見て笑いかける。