昨日から、何かと吉野くんと縁がある。
もちろんそんなの偶然だろうけど、偶然ってのは一度起きたら次々に起こるものらしい。
そう思ったのは、この日あったロングホームルームの時間。もうすぐある体育祭の、実行委員を決める時だった。
実行委員は全クラスから男女それぞれ一人ずつ選ばれるんだけど、やることは事前の準備や、体育際の特別プログラムとしてある、実行委員の人たち限定のリレー。
リレーはスポーツが好きな人ならやりたいかもしれないけど、事前の準備をやりたいって人はまずいない。
私や紫もそうで、紫なんてホームルームが始まる前から、ブーブー言っていた。
「やだやだ。うちの部の先輩に、去年実行委員やった人がいるんだけど、とにかく面倒で、部活の時間もかなり減ったって言ってたんだよ。絶対やりたくなーい!」
実行委員に選ばれた人は、何度も放課後集まって話し合いや作業をしなきゃいけないんだって。
もちろん私だって、そんなのやりたくない。
けどそう思ってるのはみんな同じで、自分からやりたいなんて言う人は誰もいない。
すると先生がこんなことを言い出した。
「このままじゃ、いつまで経っても決まらないぞから、くじ引きで決めるぞ。当たったやつに拒否権はない」
これにはクラス中からブーイングがあったけど、だからって他にいい案があるわけじゃない。
結局みんな、しぶしぶくじをひくことになる。
「箱の中に折った紙が入ってるから、男女で別れて順番に引いていくように。当たりを引いたやつが実行委員だからな」
当たりって、それってむしろハズレなんじゃないかな。
そう思ってる間に何人かがくじを引いていくけど、当たりが出たって人はまだいない。
紫も引いたけど、見事にハズレだった。
「よし! 実行委員にならずにすんだ!」
「よかったね、紫」
「次は知世の番でしょ。ちゃんとハズレを引きなよ」
「そんなこと言われても、こんなの運でしかないでしょ」
とはいえ、まだまだ確率的にはハズレの方が可能性は高いはず。
箱の中に手を入れ、一枚抜き取って、ハズレですようにと祈りながらそれを開く。
だけど、その祈りは通じなかった。開いた紙には、大きく『当たり』と書いてあった。
「そんなぁーっ!」
ショックで思わず頭を抱える。
できれば誰か変わってほしいけど、みんな気の毒そうに目をそらすだけだった。
「ありゃりゃ。知世、ご愁傷さま」
「うぅ〜っ。紫は、代わりにやってはくれないよね?」
「うん。悪いけど、それは無理」
「だよね……」
嫌だけど、こればっかりは仕方ない。
ガックリ肩を落とすと、男子の方でも決まったみたい。
「げっ。当たった」
嫌だよね。その気持ち、よーくわかるよ。私と同じ、くじ運悪い仲間だね。それに、実行委員仲間だ。
いったい誰なのかなって、男子の方をよく見る。
すると──。
「えっ、吉野くん!?」
男子の真ん中で、吉野くんがくじを握りながら顔を顰めてた。
「俺、やりたくないんだけど」
「みんなそうだよ。そういう文句を言わせないためのくじ引きだろ」
「まさか、やらないなんて言わないよな」
嫌そうにする吉野くんだけど、他の子にあれこれ言われて、それでも嫌だとは言えなかったみたい。
「わかってるよ。やればいいんだろ」
これって、吉野くんが実行委員になったってことだよね。
するとその途端、女子の空気が一気に変わった。
「ちょっと待って。男子の実行委員って吉野くん!?」
「だったら、私も実行委員になりたいんだけど!?」
「するい! 私だってそうだよ!」
さっきまで誰もやりたがらなかったのに、みんな一斉に声をあげる。
同じ実行委員なら、仕事中一緒にいられる時間が増える。みんな、吉野くんと一緒にいたいんだ。
そして、女の子たちの視線が、一気に私に注がれた。
「坂部さん。あなた、さっきやりたくないって言ってたよね」
「えっ──えぇっ!?」
もしかして、私の代わりに実行委員になろうとしてるの?
けど、同じ考えの子はたくさんいて、みんな目をギラギラさせている。とても、この中から一人なんて選ばないよ。
すると、それを聞いた先生が口を挟んできた。
「おいお前たち、これ以上揉めるんじゃない。交代はなし。この二人でもう決定だ!」
女の子たちからブーイングがあがるけと、そこで、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「男子は吉野、女子は坂部で決定だ。文句言うんじゃない」
本当に、私と吉野くんが実行委員になっちゃった。私、女子からの嫉妬が凄いことにならない?
「えっと、知世。色んな意味で大変だろうけど、頑張ってね」
紫がポンと肩に手を置くけど、私は乾いた笑いをすることしかできなかった。
もちろんそんなの偶然だろうけど、偶然ってのは一度起きたら次々に起こるものらしい。
そう思ったのは、この日あったロングホームルームの時間。もうすぐある体育祭の、実行委員を決める時だった。
実行委員は全クラスから男女それぞれ一人ずつ選ばれるんだけど、やることは事前の準備や、体育際の特別プログラムとしてある、実行委員の人たち限定のリレー。
リレーはスポーツが好きな人ならやりたいかもしれないけど、事前の準備をやりたいって人はまずいない。
私や紫もそうで、紫なんてホームルームが始まる前から、ブーブー言っていた。
「やだやだ。うちの部の先輩に、去年実行委員やった人がいるんだけど、とにかく面倒で、部活の時間もかなり減ったって言ってたんだよ。絶対やりたくなーい!」
実行委員に選ばれた人は、何度も放課後集まって話し合いや作業をしなきゃいけないんだって。
もちろん私だって、そんなのやりたくない。
けどそう思ってるのはみんな同じで、自分からやりたいなんて言う人は誰もいない。
すると先生がこんなことを言い出した。
「このままじゃ、いつまで経っても決まらないぞから、くじ引きで決めるぞ。当たったやつに拒否権はない」
これにはクラス中からブーイングがあったけど、だからって他にいい案があるわけじゃない。
結局みんな、しぶしぶくじをひくことになる。
「箱の中に折った紙が入ってるから、男女で別れて順番に引いていくように。当たりを引いたやつが実行委員だからな」
当たりって、それってむしろハズレなんじゃないかな。
そう思ってる間に何人かがくじを引いていくけど、当たりが出たって人はまだいない。
紫も引いたけど、見事にハズレだった。
「よし! 実行委員にならずにすんだ!」
「よかったね、紫」
「次は知世の番でしょ。ちゃんとハズレを引きなよ」
「そんなこと言われても、こんなの運でしかないでしょ」
とはいえ、まだまだ確率的にはハズレの方が可能性は高いはず。
箱の中に手を入れ、一枚抜き取って、ハズレですようにと祈りながらそれを開く。
だけど、その祈りは通じなかった。開いた紙には、大きく『当たり』と書いてあった。
「そんなぁーっ!」
ショックで思わず頭を抱える。
できれば誰か変わってほしいけど、みんな気の毒そうに目をそらすだけだった。
「ありゃりゃ。知世、ご愁傷さま」
「うぅ〜っ。紫は、代わりにやってはくれないよね?」
「うん。悪いけど、それは無理」
「だよね……」
嫌だけど、こればっかりは仕方ない。
ガックリ肩を落とすと、男子の方でも決まったみたい。
「げっ。当たった」
嫌だよね。その気持ち、よーくわかるよ。私と同じ、くじ運悪い仲間だね。それに、実行委員仲間だ。
いったい誰なのかなって、男子の方をよく見る。
すると──。
「えっ、吉野くん!?」
男子の真ん中で、吉野くんがくじを握りながら顔を顰めてた。
「俺、やりたくないんだけど」
「みんなそうだよ。そういう文句を言わせないためのくじ引きだろ」
「まさか、やらないなんて言わないよな」
嫌そうにする吉野くんだけど、他の子にあれこれ言われて、それでも嫌だとは言えなかったみたい。
「わかってるよ。やればいいんだろ」
これって、吉野くんが実行委員になったってことだよね。
するとその途端、女子の空気が一気に変わった。
「ちょっと待って。男子の実行委員って吉野くん!?」
「だったら、私も実行委員になりたいんだけど!?」
「するい! 私だってそうだよ!」
さっきまで誰もやりたがらなかったのに、みんな一斉に声をあげる。
同じ実行委員なら、仕事中一緒にいられる時間が増える。みんな、吉野くんと一緒にいたいんだ。
そして、女の子たちの視線が、一気に私に注がれた。
「坂部さん。あなた、さっきやりたくないって言ってたよね」
「えっ──えぇっ!?」
もしかして、私の代わりに実行委員になろうとしてるの?
けど、同じ考えの子はたくさんいて、みんな目をギラギラさせている。とても、この中から一人なんて選ばないよ。
すると、それを聞いた先生が口を挟んできた。
「おいお前たち、これ以上揉めるんじゃない。交代はなし。この二人でもう決定だ!」
女の子たちからブーイングがあがるけと、そこで、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「男子は吉野、女子は坂部で決定だ。文句言うんじゃない」
本当に、私と吉野くんが実行委員になっちゃった。私、女子からの嫉妬が凄いことにならない?
「えっと、知世。色んな意味で大変だろうけど、頑張ってね」
紫がポンと肩に手を置くけど、私は乾いた笑いをすることしかできなかった。


