【After story】傷だらけの少女は、初恋相手の幼馴染にドロ甘に溺愛される。

「お泊まり!? どこに!? それに着替えとか諸々持ってきてないし……」

「泊まるとこは内緒。あと着替えなんていらない」

「ええ……」



士綺くんって私のためならなんでも買うから心配だ。



「ほら、降りるぞ」

「はーいっ!」



海に着いて車から降りる。

すると、海の潮っぽい匂いがした。



「綺麗〜! プールは行ったけど、海は今年初だね。ほんと綺麗……」



日光の光が海と混じって、キラキラと輝いていた。

その光に、目を奪われる。



「士綺くん、海なんて来てどうしたの?」

「椿月、あのホテル泊まりたいって言ってただろ」

「え?」



士綺くんが指さした場所は、海から離れた大きなビルだった。

それは、テレビで紹介されていたホテル。

夜景とライトアップされる海が見えるホテルだって有名で……。

って、それを言うってことは……。



「え、嘘!? あのホテル泊まるの!?」



嘘でしょ、あそこ、結構高いんじゃ……。



「ああ。椿月が行きたいって言ってたからな。予約空いてたし取っといた」

「そ、そんな軽々と!?」



士綺くんの前でこれ食べたい、あそこに行きたいとは軽々と言ってはいけないと実感した。



「まったく。でも、楽しみだからいーや! 士綺くんだーいすきっ」

「……マジ可愛い」



満面の笑みで好きというと、士綺くんはすぐに可愛いという。



「夜はホテルからじゃなくて他のとこから夜景見よう」

「夜景が有名なのに他のところで見るの?」

「そっちのほうが綺麗だからな」

「うんっ。じゃあ海で遊ぼうっ。きっと冷たいんだろうなぁ」



私は今日が“あの日”だということも忘れて士綺くんの手を引っ張った。