あの朝、しっかりしなくては。
 そう思っていたのに。

 あんなにスチュワートを愛していたのに。
 いや、今も変わらずに彼を愛しているのに。 

 最後のお別れが出来なかった。
 彼との大事な赤ちゃんも守れなかった。


 もう、わたしも死んでしまいたい。
 今なら、スチュワートも赤ちゃんも天国へ行く途中で。
 今からなら、追い付けるかもしれない。
 そしたら、3人でいつまでも一緒に居られるの。



 そんな想いが何度も、ミルドレッドの頭をよぎる。
 自死等したら、教会から破門されて、行く先は地獄だと。
 そんな教えもどうでも良くなった。


 葬儀に合わせてウィンガムから来た母のキャサリンと兄のジャーヴィスから。
 スチュワートや5年前に亡くなった父アイヴァンの名前を出され、ミリーが強く生きるのを彼等も望んでいる、と励まされても。

 死の誘惑はいつも彼女の側に居た。



    ◇◇◇
 

「そろそろ、外に出られてはいかがでしょうか……」


 遠慮がちにケイトに勧められて、ミルドレッドは外出をした。
 元より買い物や食べたい物があるわけでもないが、伯爵邸では常に誰かが彼女を見守っていた。


 周囲に心配を掛けているのは承知しているが、それはまるで監視されているようで、ミルドレッドの気鬱に拍車を掛けた。