「あ!リュックがある」

滝の流れが分かれたすき間から洞窟に入り、まっすぐ進むと、昨日尊と二人で休憩した場所に出た。

私のリュックと尊のリュック。
その横には、ライトが消えた懐中電灯。

私は尊のリュックを両手で抱き抱える。

(尊、待ってて。今行くからね)

気を引き締めて立ち上がると、お父さんから懐中電灯を借りて壁の絵を照らした。

「この絵が、向こうの世界と繋がってるの?」

振り返るお姉ちゃんに、私は頷く。

「この先に尊がいる。私、行って必ず尊を連れ戻してくる」

「それなら私も行く」

お姉ちゃんの言葉に、私は思わず目を見開く。

「だめだよ!お姉ちゃんはだめ」

「どうして?」

「だって、お姉ちゃんの身体に何かあったらどうするの?」

「それを言うなら、蘭の身体に何かあったらどうするのよ?」

「私は大丈夫だもん」

「それなら私も大丈夫」

「は?何言ってるのよ、もう!」

私はだんだん本気でお姉ちゃんと言い合いを始めた。

「とにかくお姉ちゃんはだめ!」

「じゃあ蘭もだめ」

「私はいいの!絶対無事に帰って来るから」

「だったら私が一緒に行っても大丈夫でしょ?必ず無事に帰って来られるんだもんね?」

うっ…と、私は言葉に詰まる。

「お姉ちゃんには、入り口を開けたままにしておいて欲しいの。私と尊が戻って来られるように、入り口のところにいて」

「あら、それならお父さんとお母さんに頼むから大丈夫よ。ね?」

お姉ちゃんに話を振られて、お父さん達は困惑する。

「はあ、やれやれ。お互い1歩も譲らないな。それなら二人で行きなさい。でもしばらく経って帰って来なければ、すぐにお父さんが追いかける。分かった?」

私はお姉ちゃんと顔を見合わせて、頷いた。