「蘭、寒くないか?」

地面にうずくまる私に、隣に座る尊が優しく声をかけてくれる。

「こっちにおいで」

尊は私を立たせると、自分の両足の間に私を座らせ、着ているパーカーの前を開いて、後ろから私を包み込んだ。

「あったかい…」

ホッとして尊に背中を預けると、尊は両腕でしっかりと私を抱きしめた。

「ごめんね、尊。こんなことに巻き込んじゃって」

「いや、お前が一人でこんな目に遭わなくて良かった。もしそうなっていたらって、想像しただけで気が変になる。蘭、必ずここから出してやるからな。心配するな」

「うん」

必ずなんて、きっと根拠はないのだろうけど、今の私には尊の言葉が何よりも心強い。

この場所が八方塞がりで携帯の電波も届かないと分かった今、とにかくじっと身体を休めることにした。

幸いリュックには、ペットボトルの水と少しの食料も入れてある。

あまりお腹が空いた感覚はないが、食べなければ、とがんばって口にした。

その後は、もうやることは何もない。

懐中電灯のほのかな明かりの中、二人でポツポツと話し出す。