「あの……リディアです。今ちょっとよろしいですか?」

 『忙しいなら、日を改めます』と言い、私は相手の反応を待つ。
が、一向に返事はない。
それどころか、物音一つ聞こえなかった。

 あ、あら……?もしかして、寝ている?なら、一度出直した方がいいかしら?

 『せっかくの睡眠を邪魔するのは……』と考え、私は身を翻す。
と同時に、扉を開けられた。

「何をやっている?僕に用があるんじゃないのか?」

 そう言って、引き返そうとする私を制止したのは────見目麗しい少年だった。
月のように透き通った瞳とサラサラの金髪を持つ彼は、訝しげにこちらを見つめる。

「まさか、イタズラのつもりでノックを?」

「い、いえ違います……!直ぐに返事がなかったので、寝ているのかと思って……!」

 『ピンポンダッシュのようなことはしていない』と主張し、私はブンブンと首を横に振った。
すると、彼は一つ息を吐いて眼鏡を押し上げる。

「そうか。まあ、いい。入れ」

「は、はい」

 促されるまま部屋の中に入り、私はキョロキョロと辺りを見回した。