私は無表情・無愛想・無感情の三拍子が揃ったイラストを思い出し、『昔はこんなに明るかったのか』と驚く。
正直、別人を疑うほどの変わり様だから。
少なくとも、『元気いっぱいの男の子!』という印象は十八歳の彼から受けなかった。
どちらかというと、寡黙で陰のある美青年といったイメージ。

 乙女ゲームの舞台である、アントス学園に入学するまでに何かあったのかしら?
それとも、ただの思春期?

 『十八歳って、高校生くらいだよね?』と思いつつ、私はオレンジがかった金髪を持つ彼へ視線を向けた。

「ご丁寧にありがとうございます。リディア・ルース・グレンジャーです。令息のことは、なんとお呼びすれば?」

「こんなやつ、呼び捨てで充分だ」

 クライン令息を指さし、兄は横から口を挟む。
『敬称をつける価値もない!』と言ってのける彼に、クライン令息はニヤリと笑った。
その途端、牙のような前歯が口端から覗き、狼を連想させる。
また髪型もフサフサしており、襟足が長いため野性味を強く感じた。