『何を言っているんだ?』と視線だけで訴え掛けてくる彼らを前に、私はスッと目を細めた。

「私がここに居ることで、皆さんを苦しめているのなら……離れるべきだと思うんです。無理をして一緒に居たって、いいことはありませんから」

 『お互い辛くなるだけ』と主張し、私は空になったカップを近くのテーブルに置く。
と同時に、席を立った。

「本当は今すぐここを去るべきなんでしょうけど、世間知らずの私では間違いなく路頭に迷います。なので、自立出来る年齢になるまでは家に置いてください。それまでに一人で生きていける術を身につけておきますから。どうか、お願いします」

 そう言って、私は深々と頭を下げた。
馴れ馴れしく娘のように振る舞うのは、違う気がして。

「これからは皆さんの邪魔にならないよう、息を殺して生きていきます。もう二度と接触は図りません。だから……」

「────やめて……!」

 悲鳴のような声で叫び、公爵夫人は床に膝をついた。
かと思えば、下から掬い上げるようにして私の顔を上げる。