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 小公爵の体をギュッと抱き締め、私は『正気に戻って』と願う。
すると────体の芯まで凍えてしまうような吹雪はあっという間に収まり、寒さも和らいだ。
春の日差しが私達の体を優しく包み込み温める中、小公爵はパチパチと瞬きを繰り返す。

「な、にが……?」

 訳が分からないといった様子で辺りを見回し、怪訝そうに眉を顰めた。
どうやら、無事正気を取り戻したらしい。
『良かった』とホッと息を吐き出す私の前で、彼はふとこちらに視線を向ける。
と同時に、ピシッと固まった。
それはもう氷のように。

 私に抱き締められている状況に気づいて、驚いたようね。

 頭の上にたくさんの『?』マークを浮かべる小公爵に、私は内心肩を竦める。
────と、ここで公爵夫妻が駆け寄ってきた。

「「二人とも、無事|(か)!?」」

 慌てて私達の体を引き離し、公爵夫妻は一人一人の無事を確認していく。
そして、命に別状はなさそうだと判断すると、胸を撫で下ろした。