薄暗い(・・・)空間の中に目当ての人物を見つけ、僕達は歓喜する。
と同時に、困惑した。
だって────地下室の半分ほどが、世界から切り取られたように全てを遮断しているから。
レーヴェン殿下の魔法の影響を受けていないのが、いい例だ。

 僕達の声も聞こえていないみたいだし……。

 こちらを見向きもしないリディアの姿に、僕はスッと目を細める。
『原因はなんだ?』と自問しながら。

「あれは結界……?いや、それならリディアがとっくに壊している筈……じゃあ、もっと異質な何かか?」

 転移出来なかった理由なども考えつつ、僕は一先ず近づいた。
慎重にその空間へ手を伸ばし、『もしかしたら、入れるんじゃないか』という一縷の望みに懸ける。
だが、しかし……

「やっぱり、無理か」

 静電気が走るかの如く、バチッと手を弾かれてしまった。
幸いダメージはないが、ここまで強力な壁となると押し入るのはほぼ不可能。
『さて、どうするか』と悩む中、特待生がこちらへ駆け寄ってきた。