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「────おい!さっきのゲートって!」

 生徒会室に響き渡るような大声で叫び、リエートはバンッと長テーブルを叩いて立ち上がった。
こちらに身を乗り出し、不安げに瞳を揺らす彼は目に見えて焦っている。
まあ、それはこちらも同じだが……。

「リディアの転移魔法が中断された……いや、破られた?」

 『そんな馬鹿な……』と(かぶり)を振り、僕は目を白黒させた。
先程まで真横にあったゲートを見つめ、ひたすら困惑する。
冷静にならなければならないのに、上手く理性を保っていられず……居ても立ってもいられなかった。

「リディア……」

 譫言のように妹の名を呼び、僕は頭を抱え込む。
────と、ここでずっと黙っていたレーヴェン殿下が口を開いた。

「リディア嬢は学園長室の真下……つまり、地下室に居る。詳しい状況までは分からないけど、彼女────今、戦っているみたいだよ」

「「!!」」

 千里眼を通して知り得ただろうリディアの現状に、僕とリエートは目を剥いた。
『恐れていた事態が現実になってしまった』と、血相を変えて生徒会室から飛び出そうとする。
だが、しかし……

「どうやって、行くつもりだい?僕のギフトでは、地下室の行き方まで分からないよ?千里眼はあくまで現在位置から、対象に至るまでの道順(ルート)を細切れに教えてくれるだけだから」

 と、レーヴェン殿下に止められてしまった。