完全に想定外の事態ということもあり、混乱する私は正解が分からなくなった。
ああでもないこうでもないと頭を悩ませながら、目を白黒させる。

「えっと……そうですね、まずはシテンノーアガレス様?について教えてください。どなたかも分からないのに、『生贄になる』という決断は出来ませんから。出来れば、先にお会い出来るといいのですが……」

 『紹介してほしい』と申し出る私に、学園長はスッと目を細めた。

「もちろん、いいですよ。ただし────アガレス様にお会いしたら、もう二度とこちらへは戻って来れません。生贄になるにしろ、ならないにしろ秘密保持のため軟禁させてもらいます」

 穏やかな口調でありながらどことなく圧を感じる物言いに、私は一瞬怯んでしまう。
『どんなに腰が低くても、この人は歷とした悪人なんだ』と思って。

 まだ直球で頼み込んでくるだけ、マシかと思っていたけど……そんなの誤差でしかないわよね。
だって、学園長のやっていることは世界の滅亡を後押しする行為だもの。

 『見た目や態度に誤魔化されてはダメよ』と自分に言い聞かせ、小さく深呼吸する。
バクバクと鳴る心臓を宥めつつ、私は駆け引きについて思い返した。

 確か、こういう時は────

「では、考える時間をください。今すぐ決めるのは、ちょっと難しいです」

 ────押してダメなら引いてみろ、だったわね。