お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

「その前に、クライン公爵家の一件をもっと詳しく説明してくれる?」

「ええ、構いませんよ」

 チョコを飲み込んでからコクリと頷き、私は当時の状況を出来るだけ細かく話した。
と言っても、十年も前のことなので記憶はちょっとおぼろげだが。

「なるほどね。首都に来てからクライン公爵家の一件を聞いて、シナリオが変わったのは知っていたけど、そういう風に改変されていたんだ」

「改変、と言いますと……本来は違う展開になる筈だったんですか?」

「うん、そう。本当はね────」

 そこで一度言葉を切ると、ルーシーさんはとても悲しそうな表情を浮かべた。

「────あの一件で、クライン公爵家の直系はリエートだけになる筈だったの」

「!!」

 『公爵夫妻と小公爵は死ぬ予定だった』と説明され、私は衝撃を受ける。
でも、確かに私が動かなければ……リエート卿と兄をクライン公爵家に連れて行かなければ、全滅も有り得る事態だったため、あっさり腑に落ちた。
『あのとき、勇気を出して本当に良かった』と安堵する中、ルーシーさんは言葉を続ける。