「また、魔王の討伐に必要なアイテムを各地から集め、装備を万全にしてから最終決戦に挑む予定です。そして、これらの準備には────皆さんにも協力して頂きたく、存じます。中には我々が直接出向かなければならないものもありますが、大半は私達以外の人でも問題ありませんから。体力温存という意味でも、リスク回避という意味でも人手が欲しいのです」

 上から高圧的に出るのではなく、敢えて下手に……皆の力が必要だということを前面に出す。
これも兄やレーヴェン殿下の入れ知恵なのかは分からないが、ルーシーさんの本心ではあると思う。
誰よりも魔王の討伐を真剣に考え、恐れ、備えてきたのは間違いなく彼女だから。

「なので、どうか皆さん────まだ未熟で、幼い私達を助けてください」

 『お願いします』と言って頭を下げ、ルーシーさんは話を締め括った。
『これで無理なら、地道に説得していくしかない』と思案する中、大人達はようやく態度を軟化させる。
きっと、子供にここまで言われてしまったら断れないのだろう。

「……分かった。ルーシー嬢の意見を支持しよう」

 先陣を切るノクターン皇帝陛下に、私の父やクライン公爵も続く。
他の貴族や神殿関係者も次々と賛成の意を示し、魔王の討伐はルーシーさんの未来予知をもとに行うこととなった。
もちろん、詳細はよく話し合ってから決めることになるが。
とにかく、最大の山場は越えたとみていいだろう。