上手に立ち回る彼女を前に、私は少し感心してしまう。
『自分だったら、こうはいかない』と思って。

「ルーシーさん、凄いですね。受け答えバッチリです」

 隣に座る兄へ小声で話し掛け、私は感嘆の声を漏らす。
すると、兄は小さく肩を竦めた。

「そりゃあ、僕と殿下できっちり教育したからな」

「えっ?」

「ほら、生徒会室に集まった次の日────『新しい予知を視た』とか言って、魔王の追加情報を沢山くれただろう?だから、あのとき僕と殿下で会議の対策を話し合って、特待生に教え込んだんだ」

 『正直ちょっと不安だったから』と零し、兄は苦笑を漏らす。
その視線の先には、ルーシーさんの手が……。

 あら、凄い汗……やっぱり、ルーシーさんも緊張しているのね。

 『それなのに一人で頑張って……』と心打たれる中、兄はカチャリと眼鏡を押し上げた。

「さて、そろそろチェックメイトだな」