『誰に似たんだか』と小さく笑い、兄は身を起こす。
もうすっかり毒気を抜かれてしまったのか、先程までの悲壮感はなくいつもの兄に戻っていた。
腕の中から私を解放し、一歩後ろへ下がる彼は軽く伸びをする。

「でも、まあリディアの言う通りだな────ここは合理的に行こう」

 『感情論なんて、僕らしくない』と肩を竦め、兄は私の頭を優しく撫でた。
もう大丈夫だとでも言うように。

「という訳で、僕も魔王の討伐に参加する」

 両腕を組んで決定事項のように告げる兄は、『反論は受け付けない』と言ってのけた。
置いていく気満々だったこちらとしては、まさに青天の霹靂である。

「えっ……!?」

「何驚いているんだ?当然だろう?妹の世話は、兄の役目なんだから」

「いや、それは……」

「じゃあ、リディア一人で父上と母上を説得するか?」

 ある意味最難関とも言える二人の存在を提示し、兄は『さあ、どうする?』と笑った。
まるで、こちらの反応を楽しむかのように。