重々しい口調で放たれた一言に、私は言葉を失う。
だって、乙女ゲームの世界でそんな事態になるとは思いもしなかったから。
思わず口元を押さえて固まる私の前で、ルーシーさんは苦笑を零した。

「まあ、いきなりこんなこと言われても信じられないよね。でも、本当なの。だって、この世界にもちゃんと存在しているでしょ?────魔王(・・)が」

「!!」

 そっか!魔王!

 クライン公爵家の一件で間接的に関わった人物を思い浮かべ、私は戦慄する。
と同時に、納得した。
『確かにこれなら、よくある展開かも!』と思って。

「『貴方と運命の恋を』のシナリオで魔王は倒され、世界に平和が訪れるんですね?」

「そういうこと。で、私はそのためにハーレムエンドを目指していたって訳。このルートが一番魔王に勝ちやすいから。まあ、そこに辿り着くまでが大変なんだけど……っと、それはさておき」

 横道にそれかけた話題を元に戻し、ルーシーさんはコホンッと咳払いする。