お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

「実はレーヴェン殿下に、私達の密会を知られてしまっていたようなんです。多分、会話までは聞かれていないと思いますが、念のため」

「あーーー……なるほどね」

 特に取り乱すこともなく、ルーシーさんはすんなり理解を示した。
『なんですって!?』と騒がれる展開を予想していたこちらとしては、拍子抜けである。

「あら、あまり驚かれないんですね」

「まあね。だって、レーヴェンは生粋の腹黒キャラだし。聖女候補と公爵令嬢の偵察くらい、普通にやってのけるでしょ」

 『あいつなら、有り得る』と深く頷き、ルーシーさんは小さく肩を竦めた。
かと思えば、スッと表情を引き締める。

「とりあえず、これで会話を聞かれる心配はなくなった……んだよね?」

「はい、恐らく。結界で音は完全に遮断していますし、幻で姿を隠しいるため口唇を読むことも不可能です」

「オーケー。じゃあ、本題に……ん?リディアのポケット、妙に盛り上がってない?」

 一部パンパンに膨らんでいるブレザーを指さし、ルーシーさんは首を傾げる。
『何を入れてんの?』と不思議がる彼女の前で、私は

「あっ、そうでした」

 と、声を漏らした。