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 ────野外研修の一件から、早一ヶ月。
アントス学園はすっかり平穏を取り戻し、いつもの生活へ戻っていた。
とてもじゃないが、つい最近事件の起こったところとは思うまい。
被害者であるルーシーさんも心身ともに、かなり回復されたようだから。

 隣に腰掛ける茶髪の彼女を見つめ、私は少しばかり頬を緩める。
というのも、こうして校舎裏に呼び出されるのは実に久しぶりだったため。
『最後に呼び出されたのは野外研修の前だったわね』と思い返しつつ、草花の香りに目を細めた。

 土手になっている地面へ腰掛けて、お話なんて新鮮だわ。
前世ではまず外に出られなかったし、今世では必ず敷物を用意されていたから。
こんな風に(じか)で座るのは、初めて。

 などと考えながら目を輝かせていると、ルーシーさんが一つ息を吐く。

「やっぱり、これしかないよね」

 独り言のようにそう呟き、ルーシーさんはギュッと手を握り締めた。
かと思えば、顔を上げる。