お兄様やリエート卿はさておき……一番の被害者であるルーシーさんは大丈夫かしら?
まだあの事件の話を出来るような精神状態じゃないのでは?

 トラウマになっている可能性を考え、私は会話を中断させるべきか迷った。
兄やリエート卿もルーシーさんの心身を気遣っているのか、チラチラと反応を窺う。
すると、我々の懸念を察したかのようにルーシーさんが小さく相槌を打った。
『続けてください』とでも言うように。

「じゃあ、早速報告していくね。まずはモリス令息……いや、モリス一家(・・)から」

 敢えて呼び名を改めたレーヴェン殿下に、私達は目を剥く。
でも、直ぐに理解した。
本件に家族も加担していたのだ、と。
だって、そうじゃなければまとめて報告なんてされないだろうから。

「こちらは爵位剥奪の上、無期懲役。財産は全て没収。神殿からは破門扱いになっている。また、ルーシー嬢には別途慰謝料が支払われる予定だ」

 私情が入らぬよう淡々とした口調で処遇を語り、レーヴェン殿下は一歩前へ出た。