救ってくれた英雄の求婚を断るなんて……世間は許さないだろうな。
あーあ、完全にゲームオーバーだよ。
どの道を選んでも、私はきっと幸せになれない……結局のところ、私にヒロインは務まらなかったんだ。

 『完璧に人選ミスじゃん』と心の中で呟き、私はふと紫髪の美女を思い浮かべる。
『リディアに憑依したあの子なら、上手くやれたのかな……』と考えつつ、一筋の涙を零した。
────と、ここで荷台の扉が勢いよく開け放たれる。
どうやら、先程の話し合いに決着がついたらしい。

「チッ……!無茶苦茶、言いやがって……!」

 バンッと勢いよく扉を閉め、男性は苛立ちを露わにする。
恐らく、依頼者の男性に『言う通りにしろ!』と押し切られたのだろう。
『感情の赴くままに殴られたらどうしよう』と不安がる中、男性は私の目の前まで足を運んだ。
かと思えば、乱暴に胸ぐらを掴む。