リエート卿に変装してルーシーさんを回収なんて犯罪の匂いしかしないため、兄は頭を抱える。
少なくとも、面白半分でやることではない。
『誰かのイタズラだったなら、どれほどいいか』と思案する中、兄はクシャリと顔を歪めた。

「嘘、だろ……僕はリエートが迎えに来たと思って……それで、一人になったリディアを探しに行こうと……」

 不安と恐怖でいっぱいになる兄は、目を白黒させながら震え上がる。
さっきの慌てっぷりの原因も判明したところで、リエート卿がポンッと肩を叩いた。

「落ち着け。お前が悪くないのは、分かっている。多分、相手が変装の達人か何かだったんだ」

「現実的に考えると、人の姿を真似るギフトか魔法を持っているんじゃないかな。ただの変装じゃ、ニクスは欺けないだろうから。いくら、妹を一人にして焦っているとはいえ……ね」

 兄の実力を高く買っているからこその考察を口にし、レーヴェン殿下はスッと目を細める。