「わりぃ。ちょっと遅れた……って、リディアも来てたのか」

「またお兄さんの手伝いかい?律儀だね」

 聞き覚えのある声に導かれ、顔を上げると────副会長のリエート卿と庶務のレーヴェン殿下が目に入った。
それぞれ資料や箱を手に持つ彼らは、長テーブルにドンッと物を置く。
兄と同様、野外研修の準備に追われているらしく、とても忙しそうだった。

 お手伝いの私と正式メンバーの皆じゃ、仕事量も全然違うからね。

 雑用程度しかこなしていない私は、『もっと力になれれば良かったんだけど……』と考える。
でも、生徒会役員しか閲覧出来ない資料などもあるため、難しかった。

 私も役員になれたら良かったんだけど、アントス学園の決まりで生徒会役員に選ばれる一年生は毎年一人だけ。
そこに皇太子であるレーヴェン殿下を差し置いて、私が入る訳にはいかなかったの。
身分差がある程度緩和されるとはいえ、皇族の存在を無視していいことにはならないから。
まあ、お兄様は最後まで『リディアを指名したかった』と嘆いていらしたけど。