上級生……それも、次期公爵の登場に一年生は騒然とするものの、本人はどこ吹く風。
恐らく、ここ数年でこういう反応にも慣れてしまったのだろう。

「お兄様、昼食は別々にしませんか?」

「はっ?」

 リディアの返答に思い切り眉を顰めるニクスは、一瞬で周囲を凍りつかせる。

「理由は?」

「食堂で食べたいからです。ほら、アントス学園の学食は美味しいと評判なので。公爵家のシェフが作る料理はもちろん大好きなんですけど、学食は今しか食べられないでしょう?」

 『せっかくなら、食べてみたい』と弁解するリディアに、ニクスは一つ息を吐いた。
ホッとしたような、呆れたような表情を浮かべながら手を伸ばし、リディアの腕を掴む。

「なら、食堂で一緒に食べればいいだろ」

「えっ?いいんですか?」

「ああ。別にそこまで食のこだわりはないからな」

 『お前に合わせる』と言い、ニクスはリディアを連れて食堂へ向かった。
徐々に遠ざかっていく二人の後ろ姿を前に、私はポカンとする。
────が、直ぐに怒りが湧いてきた。