◇◆◇◆

 あのあと、結局レーヴェン殿下がお兄様を止めてくれて、何とか事なきを得た。
揉めている時間も僅かだったから、パーティーをぶち壊すようなことにはならなかったけど……大人達から、叱られたのは言うまでもない。

 『帰宅するなり、お説教タイムだったなぁ』と思い返しながら、私はクローバーのネックレスを眺めた。

「────あれから、約十年(・・・)か。本当にあっという間ね」

 リディアとして二度目の人生を歩み始め、気づけばもう十六歳。
ついに乙女ゲーム『貴方と運命の恋を』の舞台となる、アントス学園へ入学する年齢(とし)となった。
多少の不安はあるが、『行かない』という選択肢はない。
だって、デスタン帝国の貴族は必ず学園へ通い、見識を広めなければならないから。
グレンジャー公爵令嬢としてこれから生きていくなら、避けては通れない道だ。

 まあ、ゲームの世界に酷似しているだけで本当は全くの別物かもしれないし、気楽に行きましょう。