お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

 普通にお礼を言っただけ……よね?あっ、もしかしてお辞儀の仕方が変だったとか?

 『もっと深く頭を下げた方が良かったかしら?』と思案する中、小公爵は屋敷の方へ足を向けた。

「そろそろ、中に戻ろう。途中まで送っていく」

 先程の微妙な反応に反して紳士的な小公爵に、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
一体、リディア()のことをどう思っているのか分からなくて。
『一応、親切ではあるのだけど……』と頭を捻り、私はそっと眉尻を下げた。

「えっと……せっかくの申し出ではありますが、遠慮いたします。私は裏口の方から、中に入ろうと思っていますので」

 一旦考えを整理したくてそう断ると、小公爵は怪訝そうに眉を顰める。

「裏口?そこからだと、貴様の自室までかなり遠くないか?」

「そうですね。でも────途中でお母様(・・・)のお見舞いに行こうと思っているので、問題ありません」

 『お母様の部屋は裏口からの方が近いですし』と言い、私はニッコリと微笑む。
ちなみに、お見舞いは元々予定していたことだ。
公爵夫人からも訪問許可を貰っている。