「────個人的には好きかな、君みたいな子。放っておけなくて、ついつい構いたくなっちゃう」

 『ニクスが過保護になるのも頷ける』と言い、体を離した。
と同時に、演奏が止む。

「おや、もう時間切れのようだね」

 『残念』と言って肩を竦めるレーヴェン殿下は、ターンの要領で私の体を反転させた。
かと思えば、私の背中を軽く押す。

「さあ、早くお兄さんのところへ戻るといい。今にも爆発しそうだから」

 『見てみなよ、凄い顔をしているから』と肩を竦め、兄の方へ視線を向けた。
つられて顔を上げると、不機嫌顔の兄が目に入る。
『早く帰ってこい!』と言わんばかりの形相でこちらを見つめる彼に、私は苦笑を漏らした。
と同時に、レーヴェンへ向き直る。

「楽しい一時(ひととき)をありがとうございました」

「こちらこそ」

 『久々によく笑った』と述べる彼に、私はペコリとお辞儀してから身を翻した。