人に助けられてばかりだった前世を思い出し、『今度は私が』と意気込む。
傍から見れば、とてもちっぽけな願いだろう。
『そんなの当たり前だ』と言う人も、居るかもしれない。
でも、私にとっては掛け替えのないことなのだ。
やりたくても出来なかった過去を思い返し、スッと目を細める中、レーヴェン殿下が小首を傾げる。

「周囲に感謝されたり、崇められたりしたいってこと?」

「それはちょっと違いますね。私はただ、喜んでいる姿を見たいだけです。もちろん、感謝されたり尊敬されたりしたら嬉しいですけど」

 『それが目的ではない』と語る私に、レーヴェン殿下は呆気に取られた。
かと思えば、まじまじとこちらを見つめて仕草や反応を確認する。
そして、『嘘じゃない』と確信すると────思い切り吹き出した。

「ふっ、ふふふっ……君、よくお人好しって言われない?」

「いえ、そんなことは……」

 ────ありません。

 と続ける筈だった言葉は、ふと脳裏に思い浮かんだ兄とリエート卿によって掻き消される。
『そういえば、二人とも私のこと……』と考え、咄嗟に返答を変えた。

「ある、かもしれませんわね……」

「ふふふっ。やっぱり。皇太子妃には向かないタイプだね。でも────」

 楽しげに笑うレーヴェン殿下は、またもや私の腰をそっと抱き寄せる。