レーヴェン殿下はワイングラスを軽く持ち上げ、パーティーの開始を宣言した。
すると、皆一斉に『乾杯!』と復唱する。

「それでは、パーティーを楽しんで」

 ワインを一口飲んでからクルリと身を翻し、レーヴェン殿下は玉座に(・・・)腰を下ろした。
今夜は皇帝陛下も、皇后陛下も席を外しているから。
この場に限り、トップは彼になる。

「リディア、何か食べるか?」

 空になったグラスを侍女に預け、兄はそう尋ねてきた。
『ここのデザートもわりと美味しいぞ』と述べる彼に一つ頷き、私はこの場を離れる。
何故か後ろからリエート卿もついてきたが、気にせずデザートを堪能した。

 コルセットを使わないタイプのドレスにしてもらって、良かった。
そうじゃなきゃ、食べ物を楽しむ余裕なんてなかったから。