「リディアはもう一度、僕に魔力譲渡を。リエートは露払いを頼む」

「「分かりました(分かった)」」

 兄の指示に一つ頷くと、私は再度手を握り締める。
『譲渡する魔力はさっきと同じ量でいいかな?』と悩む中、リエート卿は勢いよく駆け出した。
濡れた地面の上を走り、魔物の襲撃に対応する彼は風魔法を惜しみなく使う。
そのおかげか、複数体を相手にしても優勢を貫けた。

 いざとなったら、私の魔力譲渡を受ければいいものね。
出し惜しみして負傷するくらいなら、思い切り使ってくれた方がいい。
幸い、まだ魔力はたっぷり余っているから。

 『リディアのハイスペックに感謝ね』と思いつつ、私は二回目の魔力譲渡を終える。
────と、ここで兄はリエート卿に追いついた。
しつこく向かってくる魔物達を氷の槍で貫くと、もう少し先に行くよう促す。
もっと魔物の密集したところへ行き、大技を使う寸法なのだろう。
さっきの範囲攻撃からたまたま逃れただけの魔物に、手間と魔力を掛けるのは勿体ないから。