『派手にやるぞ』と言い、兄は前を見据える。
と同時に、リエート卿が風を纏って退避してきた。
『風のおかげか、移動スピードが段違いに早い』と感心する私を他所に、兄は一度立ち止まった。
かと思えば、片足を軽く上げ、思い切り地面を踏みつける。
その途端────地面が凍りついた。
だけでは終わらず、魔法の範囲内に居た魔物達を全身氷漬けにする事態へ。
あれはもはや、氷像である。

 幸い、私達の足元は凍ってなくて無事だったけど……相変わらず、凄まじい威力ね。
これだけの魔物を一瞬にして、戦闘不能へ追い込んでしまうんだから。

 素人目でも分かる兄の力量に、思わず目を見開く。
────が、空から降ってきた水の矢を見て、まだ魔物はたくさん居るのだと悟った。
『敵の規模は数万だものね』と考える中、リエート卿が水の矢を全て叩き切る。
おかげで、私達は無傷だった。

「とりあえず、先を急ごう」

 そう言って、兄は凍った地面を一部溶かす。
魔術を用いて道を作り、冷気も私達の周囲だけ緩和させた。