お兄様の武器は、基本魔法だけ。
一応武術の心得もあるみたいだけど、魔物の大群を蹴散らすほどではない筈。
だから、アレン小公爵の言うような状況に陥ったら……死ぬ可能性が高い。

 いくら戦闘経験に疎い私でも、兄を一人で行かせるのは危険だと分かり、立ち上がる。
だって、大切な家族を失うかもしれないと思ったら居ても立ってもいられなかったから。

「私も一緒に行きます!」

 ずっと守ってきた沈黙を破り、私は同行を申し出た。
今までは自分が口を出していい領分じゃないと思っていたから、静観してきた。
でも、勝算の低い賭けに兄が身を投じると言うなら話は別。
『家族として、黙っている訳にはいかない』と兄の元へ駆け寄り、言葉を紡ぐ。

「実力も経験も乏しい私ですけど、魔力量なら引けを取りません。どうか、連れて行ってください」

「ダメだ。実戦経験もほとんどない素人にいきなり戦場なんて、危険すぎる。それに体調だって……」

「それなら、もう大丈夫です。皆さんのおかげで、大分良くなりました」

「だとしても、ダメだ。大体、魔法のコントロールなんてまともに出来ないだろ。足手纏いになる未来しか見えない」

 私の身を案じてか、兄はわざと厳しい言葉を投げかけて来た。