アレン小公爵も魔物の襲撃に備えて、何時間も気を張ってきた状況だものね。
そんな状態で討伐隊に合流しても、充分に活躍出来るとは思えない。

 『お兄様の懸念は尤もだ』と理解を示す中、リエート卿が意を決したように顔を上げる。

「兄上、俺も一緒に行くからニクスの提案を受け入れてくれ。頼む」

 両親の安否と兄の安全を考え、リエート卿は兄の意見を後押しした。
『俺がちゃんとニクスを守るから』と述べる彼に、アレン小公爵は顔を歪める。

「大切な弟を戦地へ送り込もうとする兄が居ると思うか?」

「それは……」

「俺はもう父上と母上を送り出した、己の無力さを呪いながら……それがどれだけ辛かったか、理解出来るか?」

「っ……」

「俺に二度もそんな思いをさせないでくれ」

 懇願にも近い声色で、アレン小公爵はリエート卿の出陣を断った。
確固たる意志を見せる彼に、リエート卿は何も言えなくなる。
家族を失うかもしれない不安は、この場の誰よりも理解しているから。
苦渋の表情で下を向き、自身の手をギュッと握り締めた。