縋るような目でアレン小公爵を見つめ、リエート卿は表情を強ばらせた。
こちらに転移してから今に至るまでクライン公爵夫妻の姿を見ていないため、気が気じゃないのだろう。
『無事なんだよな!?』と迫る彼を前に、アレン小公爵は少しばかり表情を曇らせる。

「父上と母上の安否は……俺にも分からない。騎士団と一緒に、魔物の大群を食い止めに行ってしまったから」

「そんな……」

 リエート卿は『この世の終わり』とも言うべき表情を浮かべ、膝から崩れ落ちそうになっていた。
壁に手をついて既のところで押し留まっているものの、今にも挫けそうである。
『両親が居なくなるかもしれない』という不安に怯える彼の横で、兄はおもむろに腕を組んだ。

「父上達が駆けつけるまで、少なくともあと五時間は掛かります。その時まで持ち堪えるのは……」

「……さすがに無理だろうな。既に魔物を発見してから六時間、そして交戦に発展してから四時間経過している。討伐隊の方は肉体的にも、精神的にも相当辛い筈だ」

 『既にもう限界』と主張し、アレン小公爵は天井を仰ぎ見た。