葉は水溜まりでゆらゆら揺れ、女児の父親は意味がわからない様子で「何かあったのか?」と女児に再ふたたび問いかける。


女子は水溜まりの葉から視線を離すと首を振り、「ううん、なんでもない。」と答え、胸で鳴き声をずっと上げる子猫を抱えて助手席に乗り込んだ。


そうして車が動物病院へと向かい走り出すと「不安」や「心細い」と感じさせる鳴き声を子猫は女児の抱える胸の中で鳴いた。


女児はさきほどの空より舞い落ちた葉は太陽からこの子猫へのメッセージに思えた。



女児は胸の中で鳴く子猫にひっそりと静かに囁いた。


「キミは太陽に守られているから泣かなくていいんだよ。


きっと、キミの声は太陽に届いたんだ。

だから、雨が止んだ。


キミは私がこれから守る。

私の言葉がわかればいいけど……だからキミも聞かせて。


キミの言の葉を……」


子猫は「みゃーみゃー。」と相変わらず鳴いている。


なんだかそれが女児に問いかけてくれる言の葉みたいで、女児は思わずその意味を聞き返すみたいに。



「キミの言の葉は───」


と静かに答えのない問いかけをして、胸の中の子猫を繊細せんさいな手つきで撫でた。


母猫が必死に守った命が繋ぎ止められた。

それは「愛」と「不安」の中で自分の子供を自分の命に変えても守ろうとした母の想い。


母猫の命が絶えても注がれた「愛」。


それは「変わらない愛」で我が子の命を繋いだ母猫の短い命の軌跡の跡あとだった───