言の葉は




そうしてまずは鳴いている子猫を拾い上げて、バスタオルで濡れているとても小さな身体を拭うように包んだ。


その子猫を女児に持たせると父親は薄く瞼を開き、「愛」と「不安」をその白く濁った瞳に宿やどして、腹部に視線を向けて固まる母猫の頭を撫でた。



「さぞかし必死だっただろう…。

自分の子供のために必死に我が子を見て……自分の命よりも子供を何よりも生かしてやりたかった…

わかるよ。その目を見たら……。」



女児の母親は鼻を啜すすり、込み上げる哀しみに、そして、必死に一生懸命に自分の子供に母乳を与える体勢たいせいのまま事切れる母猫と無残むざんにも死んでいる5匹の子猫達を見つめていた。


父親は次々に子猫達5匹をバスタオルにくるみ、最後に母猫をくるんだ。

母猫を抱えると女児の父親は「よく…頑張った……。キミの残した命は大切に…そう、大切に育てるから……


だから……」



「ゆっくりお休み───」


女児の母親はうつむき泣いていた。


父親も泣いていた。


車の後部座席に母猫と姉弟猫達を乗せて、女児は「みゃー。」と鳴く子猫を抱えて車の助手席に乗ろうとした。


母親は後部座席で母猫と姉弟猫達の横に乗り、父親も運転席に乗った。



すると不意にカラスの鳴き声が聞こえた。

女児が抱える子猫もそれに同調どうちょうするように鳴いた。