言の葉は



女児は鳴き声を上げる子猫を見て、「大丈夫。今からパパとママを呼んでくるから待ってて。」

と言い、傘を母猫と子猫と姉弟猫達に被かぶさるように地面に立てかけて、自身の父親と母親を呼びに駆け出した。


子猫はずっと、ずっと女児と女児の両親が来るまで、いや、来ても鳴き続けた。


女児の父親は残酷な現実を目の当たりにして、吐息を深くついた。

女児の母親もこの子猫の置かれた環境に胸を痛める。



女児は意味がわからない。

確かにこの目の前で鳴いている子猫がいる。


そして───

その傍そばに母猫と姉弟猫がいる。



しかし、女児には目の前の母猫と姉弟猫達が生きているとしか思えない。


死んでるなんて理解したくないのだ。

まだ助かると都合良く思っている。



女児の父親は女児の肩に手を置いて、「一緒に見送ってあげよう…。」と言うと女児の肩に置いた手を女児の頭の上に置き、路肩ろかたに停とめている車からバスタオルを数枚持って来た。