言の葉は

その年配男性は瞼を閉じたまま、深く祈りを捧げているみたいに思えた。


正月ならまだしも、まだ12月で僅わずばかり早い。


なぜか、不可思議な光景に思えた。その光景を僕はずっと見ている。


10分は経っただろうか。


それくらい長い祈りを、いや、願いかもしれない。その年配男性は神社に捧げて、よくよく見てみると年配男性は脇に一輪いちりんの花を挟んでいて、瞼を開けたと同時に手をその一輪の花に向け、茎くきを労るように持ち、こちらへと向かってくる。


僕は僕の方へ向かってくる年配男性を見つめたままでいた。



年配男性は僕の前に立ち、僕の姿を見ると微笑み、「天野あまの高等学校の生徒なんだね、キミは」と懐かしそうな表情を浮かべた。


僕は「はい」と小さく返事を返し、年配男性が大切そうに持っている一輪の花を見た。


その花は紫色に咲く小さな花。見ていると儚はかなく、なぜかその花を見ると見るだけで、触れただけで散って、姿形を無くしてしまいそうな、そう、そんな取り返しのつかない危あやうさや脆もろさを含ふくんだみたいな哀しそうな装いをしている一輪いちりん。


寂しそうな一輪。