行き場のない僕の願いは大切な記憶で忘れたくない言の葉ことのはで。
家族を夢見て残酷ざんこくな現実を生きるための僕の心の真ん中にある芯しんで、御守りおまもりのようで。
それは絶対に曲まげたくない気持ちで───
だから──
僕はお姉ちゃんを否定したくないんだ。
父さんも母さんも否定したくないんだ。
だから逃げたくないんだ──────
横から蹴りが飛び、僕の脇腹わきばらを強く打ち、僕は椅子いすごと倒れ、白いリノリウムの床ゆかに頭をぶつけた。すると、男子と女子は一斉に笑い出して喝采かっさいする。
教師はそれを見ていながらも事務的に授業を続ける。
僕はリノリウムの床に手をつけて、それが次第に拳こぶしを握にぎる。
前髪が倒れた拍子ひょうしに目元めもとを隠しているが、涙はリノリウムの床を濡ぬらし、僕は歯を食い縛り、この嘲笑と暴力に堪こらえようとした。
お姉ちゃんのかつての言葉はイジメられて、その現実から逃のがれられない人からすれば残酷だ。
でも、その現実がわかっていながらもお姉ちゃんの言葉を否定したくない。
授業が終わると教師は何事なにごともないとでもいうみたいに平凡へいぼんな表情で教室から退室たいしつした。
すると大山金太と合わせて5人が倒れて微かに啜すすり泣く声を力一杯ちからいっぱい結んだ唇から漏れ出さないように堪えている僕のその姿を見下ろし、金太は僕の頭に右足を押しつけた。
そしてまた教室中がドッと笑いに包まれる。

金太は右足に力を込めてぐりぐりと僕のこめかみを痛ぶるみたいに、そのさまを楽しそうに眺めて僕に向けて言った。

