「もしも、僕が強くなって立ち向かって勝てたとしても金太くん達は今の僕と同じ思いをしなきゃいけないんだよ?僕は誰かに同じ思いをさせたくない。
だって苦しいもん」
茜は僕の純粋な言葉を聞いて、その瞬間、僕の身体をギュッと包んだ。
「その優しさはズルいよ、遥斗」
なぜか茜は泣いていた。空も雨粒の勢いを、その装いを激しくしていく。
相合傘あいあいがさで茜と僕は帰った。
茜は帰りの道中どうちゅうに濡れる街々を眺ながめて隣にいる僕に向けて、「でも、良かった。私さ、あんまり時間取れないでしょ?でも、今日に限かぎって遥斗帰ってくるのが遅いから迎むかえに行って正解」と言い、茜はクスッと笑う。
そして─────「ねえ、遥斗。立ち向かうのはやり返すことじゃない。それに勝ち負けでもない。それと強さでもない。暴力に抗う意思と言葉でわかり合おうとする意思だよ」
茜は人差し指を立てて、うんうんと自身の言った言葉で頷く。
唐突に茜は言う。
「きっと、遥斗は立ち向かう勇気があるのに、ただそれに気づいていないだけ」
そんな茜の言葉に「そーかなー」と半信半疑はんしんはんぎな僕。
「そう。だから、だからだよ。遥斗は大丈夫なんだよ」

