金太は苦々にがにがしい顔をして、傘かさを持つ乱入者。僕の姉、茜を見つめて、「今日は腹の調子が悪い」と半なかば負まけ惜おしみにも近い発言をして去って行った。
きっと、金太は女子に負けたことを認められないのだろう。
茜は起き上がる僕に向けて傘を差す。そして、僕に聞いた。
「なんで立ち向かわないの遥斗?」
僕は起き上がり、雨に濡れた服を絞しぼるようにして茜の質問に答える。
「あいつら、5人いたんだよ。勝てるわけないじゃん。それに金太くんは身体がでかくて強いんだ。僕じゃ無理だよ」
茜はポケットからハンカチを取り出し、僕の当時、小さくてガラスのように脆もろい身体の至いたるところの雨粒を拭ふきながら、「ならなんで私は金太くんに勝てたの?私は女子だよ。金太くんより身体も小さい」と言うと茜は僕を労いたわるように僕の両手を軽く、それでいて繊細せんさいに、まるで壊こわれないように気を配くばるような何か大切な物を包むように両手で包み、僕を真っ直ぐ見て微笑み「うん」と頷き、言った。
「時には立ち向かう勇気も必要なんだよ」
と茜は僕の濡れた頭をハンカチで拭いた。僕は茜に答えた。純粋な感想だった。

