言の葉は

そして、その痛みが何かの化学反応かがくはんのうみたいに、僕の心と結むすび、幻まぼろしみたいに記憶が心より再現さいげんされる。


瞳の奥底おくそこにスッと映し出されるあの日の記憶に。


あの頃の僕は11歳で姉あねの茜あかねは15歳。



僕はあの当時、輪わを囲かこむようにして野次やじを飛とばされていた。



それがなぜなのかはわからなかった。

ただ、具体的ぐたいてきな理由があるとするならば、僕に野次やじを飛ばす輪の主犯しゅはんの好きな女子が何気なにげなくその日、僕にボールペンを貸かしてくれたことくらいで、その女子は隣の席だったから親切にしてくれた───


それだけのことだった。


でも、その主犯の大山金太おおやまきんたは何かを勘違かんちがいしたらしく、僕を仲間と共に取り囲み、輪の隊列たいれつを組み、ひたすら僕に心無い言葉を投なげかけ、それは次第に暴言ぼうげんとなり、次には肉体的な暴力へと変わった。


微かな雨雲あまぐもが小さな滴しずくを囁くみたいに辺りを濡らし、僕は金太の蹴けりがお腹に当たり、堪らず倒れた。


頬をポツポツと小さく打ちつける雨粒あまつぶに僕は目を細ほそめた。



金太は僕を見下みおろしてにやりと歪いびつな微笑みを浮かべる。その仲間達も。



その時、思わぬ乱入者らんにゅうしゃが入ってくる。



金太は無言で吹ふき飛ばされ、それはどうやら乱入者の勢いきおいをつけた飛び膝蹴とびひざげりで、主犯のリーダーがやられるとその仲間は脆もろくも逃げて行く。