言の葉は

少女は何なにかに気づいたように手を叩たたいて陽気ようきな声音で、「あ、そー言えば、可愛い後輩にまだ名前を名乗なのってなかったね」と言い、「よっと!」と、石段に立ち上がり、僕の目の前で右手を差さし出して言った。


「私は出雲詞葉いずもことは!キミは?」



僕は差し出された手に握手あくしゅを交かわし、少すこし照てれてしまいながらも名乗った。



「僕は明星遥斗みょうじょうはるとって言います」



詞葉は手を合わせて嬉しそうに言う。



「私達ってお互い珍めずらしい苗字みょうじだね」



「そ…ですね」



そう僕が言うと詞葉は「丁寧口調ていねいくちょうはやめにしょ?だめ?」と首を傾げて僕に聞く。


僕は詞葉の仕草があまりにも可愛くて頬ほおを赤らめてしまい、それを隠すようにうつむき、「いいですよ、いや、わかったよ、詞葉」と女子耐性たいせい0の僕の精一杯せいいっぱいの返事を返す。



僕は立ち上がり、制服のズボンについた埃ほこりを払はらうと、「じゃあ、僕は学校に行くね」と詞葉に告つげる。



詞葉は「無理しないでね」と言うと微笑みを浮かべて、僕は「ありがとう」と礼を言って、詞葉から背を向けて歩を進めた。



鳥居とりいをくぐると今まで朝陽が差していたのに唐突とうとつに暗雲あんうんが立ちこみ、暗雲は太陽を隠した。


すると空が泣き出すみたいに白い雪が無数の涙なみだの結晶けっしょうのように降ふり始はじめて街々まちまちを哀かなしそうな装よそおいに包つつんだ。