「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる



 副社長は躊躇うことなく、人の目も気にせずに舗装された歩道で私にひざまづいた。
「……どうしたんですか、副社長!」
 慌てる私のリングのはめられた左手を今度はそっと握って、副社長が静かに息を吐いた。
「……俺がはるを意識しはじめたのは、二年ほど前だ。気配りが上手いし、人をよく見ている。なにより俺の軽口に気軽に乗ってくれるところが良かった。だけど、はるにはすでに今倉という交際相手がいた……だから諦めようと毎日必死だった」
 言葉を選んで、真摯に紡ぐ。
 まっすぐに、目線でもこれが真実だといわんばかりに強く訴える。
 そこには……私が疑う嘘は感じられなかった。
「……まったく、気づきませんでした」
 私も、それにこたえようと正直な気持ちを言葉にした。
「そうだろう? バレて変な空気になって、はるが会社を辞めるなんて言い出したら嫌だと思ったんだ。上司らしく……今倉との交際を邪魔するつもりだってなかった……だけど」
 言葉に詰まる副社長と視線を合わせたくて、私も歩道にしゃがみ込んだ。
「……そういうところだ。今倉にプロポーズされたと聞いたときも、諦めきれなかった。婚約を破棄されたと聞いたときには、はるはこのままどうにかなってしまうんじゃないかって心臓が潰れそうになった」