エヴァから返された言葉に、ぐうの音も出ない。


 ……あの内の誰かと結ばれてくれたらいいなぁ、と。
 それを望んでいたのは、私なの。 
 彼等と結ばれてくれたら。
 エヴァ、貴女とずっと一緒に居られる、と思ったから。


「行ってくるね」と。


 残念令嬢なエヴァから聞かされる。
 やっぱりフェルフランのお祖母様の所へ行くんだ、って笑って。
 あちらで商いを学んで、仕込んで貰ってくるね、って瞳を輝かせて。


 ローマイアに戻ってきたら、商会とまでは行かなくても、個人で売買出来るように精進してくるからね、って誓われたら。
 そんな楽しそうなエヴァの顔を見たら、行かないで、と言えなくて。



 ここでの貴女を守っていた、伯爵家長女とか、王立騎士団統合副団長の愛娘とか、王子の幼馴染みとか。
 
 他の国に行ったら、何の意味もないのよ?
 フェルフランでの貴女は、一商会の孫娘でしかないのよ?

 それでも、行くの……ね?



 そう言えば、あいつ、ルーカス!
 テディに手紙出してんの。

 領地で牛のお世話してて、牛乳いっぱい飲んで、背を伸ばす!だって。
 子供か? まだまだ俺は成長期だから、なんて書いてるし。


 あのルーカスが牛よ?
 朝早くから起きるとか、汚れるような仕事はしないはずよ。
 幼馴染みだからこそ、断言できるわ。


 あの男に動物のお世話なんて、無理よ。
 身長が伸びようが、更に縮もうが、どちらにしろルーカスだけはエヴァに二度と近付けさせない。


 信じられないことに、あいつも変わったな、なんてじんわり感動しているテディ。
 多分浮気をしても全然反応しなかったエヴァに襟元掴まれて、揺さぶられて、罵られたのが良かったんじゃないの、って。


 結局はルーカスも目が覚めると、やっぱりエヴァなんだよ、とテディは言うの。