自然と震えが止まらない。


「ミュラー」


心配気な声が、近づいてきて。

彼が屈みながらも、膝を折るから泣けた。

伯爵が膝を折るのは、すげー勇気ある女性扱いで。

特殊部隊では考えられないのよ。

お互いに。

だってライバルだもん。

我慢だもん。

この男が優しいのは、私が演じるミュラーだけ。

私ではないの。

だから私は、替え玉だし。

弁えなきゃ。

上目遣いに見上げると、優しい視線が注ぐ。

まるで大輪の薔薇。

これがロマンス?

では、終わらないのが現実であった。

「アーサー・・・」

強く強く抱きしめる。

抜けたい。

優しく抱きしめられ、持ち上げると抱っこ。

所謂お姫様。

甘えたまま、私はなすがまま。

これがお姫様活らしく、私は彼の人形で居た。

私はドール。

鏡映しのドール。

あなただけの愛玩だから。

私は言いなりになるしかない。

彼を怒らせればイギリスでは、暮らせないと言われた有名権利者。

若き当主にして、支部長たるグル。

私は・・・

逆らえないの。

これからも。

彼女が戻るまでは・・・・