奥へ入っていくめぐるの後を充則とついて行きながら雄嵩は叫ぶ。 「いや、今の人、すごい有名な、天才的な棋士(きし)の人なんだってっ」 「え? 技師? 放射線技師とか?」 「いや、なんでだよ」 と言ったとき、めぐるが立ち止まった。 「あれ? 田中さんがテレビに出てる」 父親が居間で見ていたのは将棋の番組だった。 ちょうど誰かと話している田中一郎がアップになっている。 「落語家なのに、なんで、将棋の番組に出てるんだろ」