「私、いらなくない?」
めぐるは、田中が勝利した日の夜、雄嵩にそんな愚痴を言った。
もうすぐ取り壊されるので引っ越さなければならない長屋の窓枠に腰掛けて。
ちなみに、雄嵩は違う窓に腰掛け、もう風がひんやりする季節なのに、カップのバニラアイスを食べている。
「私、この世にいらなくない?」
「……極端な人だよね。
なにそれ、田中竜王にお菓子作ってあげられなかったのが、こたえてんの?
大丈夫だよ。
竜王戦はじまったばかりだし。
それに、田中竜王にとっての姉貴の存在価値って、無になるお菓子を作れたり、縁起のいいお菓子を作れたりすることだけじゃないんじゃないの?」
だから、対局前になにも言ってこなかったんじゃない?
と言う雄嵩に、
「……私の価値って、なに?」
と訊いてみる。



